Utada 『EXODUS』
Utadaの『EXODUS』日本盤には歌詞の訳と訳者との対談が付いてくる。雑誌のインタビューやTVではどうでもいいようなことしかしゃべらない宇多田だが、この対談ではわりと突っ込んだ話をしている。
その話の中心は、「何でヒッキーはここまでエッチになっちゃったのか」に対する言い訳というか説明なのだが、私がhttp://d.hatena.ne.jp/KGV/20040402で解釈したように、日本語でも性的な要素を過剰に包み込んだ内容の歌詞を歌っていたのであり、それが宇多田の本質と言ってもいいのだ。
つまり、全世界を性的な対象にしてしまうという巫女的な存在(吉本隆明『共同幻想論』)が宇多田ヒカルであり、今回ついに「くすんだブロンドのテキサス男」に「極東の人たちがどうやって楽しむのか教えて」あげる事態にまで至ったのだが、このborn-again Christianであるテキサス男が、"So what's it like to start life all over?"と尋ねられ、"Amen, I feel like I've been rediscovering the tomb of Tutankhamen"と答えるのを聞けば、誰もが第43代アメリカ合衆国大統領を思い浮かべないわけにはいかない。
"Push it up, pusu it down"が繰り返される"workout"の最中、"Baby, don't put me down"と叫ぶFar Eastの女が最後に"If you want, you can come / Come get it, get it / If you don't you may really regret it"と誘惑する『THE WORKOUT』について、本人は対談でそれがブッシュを想定して書いたことを否定しているのだが、明確な意図がなくともアメリカ合衆国と激しく性交してしまうような歌詞が今このような状況下で書かれてしまうことが、この歌手を特別な存在にしている。
しかし一方で、本人も言うように「歌詞とか音楽って本来はそういうもの」なのである。特に歌は性的なものである。
なぜならば、声は性器に他ならないからだ。
ただし、"She's got a new microphone"と歌われたとき、彼女が歌手ならば、"microphone"は彼女の中に受け入れられるものではない。
"You make me want to be a man"と歌う彼女のファルス、それが"microphone"なのである。