00年代の30枚 その1
00年代もあと数十分となりましたが、この十年を振り返るにあたりやはり音楽を通して見るのが肝要だと思い30枚ばかり重要な作品を選んでみました。。
順位は付けずに年ごとに選びます。
まずは、2000年から2003年まで。
2000年
D'Angelo 『Voodoo』 (米国)
ヒップホップ以降のR&Bの一つの到達点のようなアルバムです。2000年に到達してしまって、その後の合衆国のR&Bがどうなったかというとご覧の有様です。
適度な歌の下手さが実にいい感じでラップと歌の微妙な融合具合を見せてくれますが、これ以降シンガーとしては活動していないようです。
Roberta Flackの『Feel Like Makin' Love』のカヴァーなんかも素晴らしいです。
また、アフリカ的な部分はラテンの一方のルーツとしての「アフリカ」を感じさせ、そこをすかさず感じ取ったCaetano Velosoがインスパイアされ『Noites Do Norte』というこれもまた名盤を作りました。
ジョアン・ジルベルト 『ジョアン 声とギター』 (ブラジル)
プロデューサーはCaetano Velosoで、このタイトル(JOAO VOZ E VIOLAO)も彼が付けたのだと思いますが、恐らくは「ドラム&ベース」を意識したのではないでしょうか。
90年代を代表する、というより20世紀の最後の音楽としてのドラムンベースに対するブラジルサイドからの一つの回答だと想像しました。
1959年以降次第にキーが下がり続けるジョアン・ジルベルトの歌は、ついに底に達したようですが、にもかかわらずその重量は減り続けることで、最も軽くかつ最も下であるという驚くべき状態を聴かせてくれます。
Amar 『Outside』 (英国−インド)
UKエイジアンの人ですが、どちらかというとインド風味の米国的R&Bです。
マイナーですが、わりと好きでよく聴きました。
ファナ・モリーナ 『Segundo』 (アルゼンチン)
いわゆるアルゼンチン音響派です。こういう人は南米でも意外にブラジルにはいなくてアルゼンチンなのです。
エレクトロニクスとアコースティックの融合が素晴らしいです。
2001年
ブリトニー・スピアーズ 『ブリトニー』 (米国)
こういうのを聴くとアメリカ合衆国の底力を感じます。
典型的00年代ポップスのサウンドですが、そこらの音とは全く違います。歌も含めて実にスムーズな音であり、それはスピーカーで聴けば誰でも分かります。英語で歌詞がここまで明瞭に聴き取れる歌というのはちょっとないです。
クレイグ・デイヴィッド 『Born to Do It』 (英国)
いわゆる2STEPの歌物ですが、2STEPがどうのというより英国のR&Bとして大いに可能性を感じさせるものでした。しかし、その後は特に盛り上がることもなく、彼の二枚目も良くなかったです。
でも、このアルバムは非常にいいです。
ルーファス・トラウトマン 『No Compromise』 (米国)
ロジャー・トラウトマンの甥です。曲もロジャー・トラウトマンそのままですが、音はサウンドだけ現代的です。
トークボックスファンなら泣ける一枚です。
タルヴィン・シン 『Ha!』 (インド)
UKエイジアンのタブラ奏者よるドラムンベースです。
タブラ・バヤの伝統的な演奏を聴くと多くの人は、「これはドラムンベースそのものではないか」と感じると思うのですが、その思いのままに現代的なドラムンベースをやってしまった人がタルヴィン・シンです。
したがって、分かりやすいコンセプトと言えば言えるのですが、実際に音になったものを聴くと音楽の歴史と空間が交叉する瞬間に立ち会えます。
ヌスラット・ファテ・アリ・ハーン 『ファイナル・スタジオ・レコーディングス』 (パキスタン)
パキスタンが誇るカッワーリーの大歌手です。
晩年の録音なので90年代後半に録られたものでしょう。
「スタジオ・レコーディングス」というだけあってカッワーリーにしては珍しくオンマイクの録音ですが、それがこの音楽の恐るべきモダンな面を垣間見せてくれます。
これこそ未来の音楽ではないか、という気さえします。
2002年
ジュリー・ドイロン 『Heart & Crime』 (カナダ)
音数の少ないギターやピアノの演奏で歌う非常にシンプルなアルバムです。
静かでいいです。
ローリン・ヒル 『Mtv Unplugged No 2.0』 (米国)
MTVのUnplugged Liveですが、たんなる企画物ではない極めて重要なアルバムです。
「もう、これでいいじゃないか」と言わんばかりにギター一本で歌うだけのこのアルバムが、その後のR&B/ヒップホップの一つの終焉を決定したように感じさせます。
レオ・コッケ&マイク・ゴードン 『Clone』 (米国)
ジャケットでレオ・コッケは当然12弦ギターを、マイク・ゴードンはリゾネーターベースを演奏していますが、この組み合わせはアコースティックの一つの究極であるような気がします。
ムーム 『Finally We Are No One』 (アイスランド)
双子(ベルセバのジャケットに出てくる二人)がいた最後のアルバムなのでしょうか?
双子がいなくなるバンドというのがいいですね。村上春樹の世界です。残ったメンバーに羊の着ぐるみを着せてやる必要があります。
しかし、アイスランドというのもおかしな国ですが、日本もこういう素晴らしい音楽が出てくるようなら破産したっていいじゃないかという気もします。
その2に続く