仏教の思想と西洋の思想

空海の即身成仏論と華厳思想、カントの哲学とラカンの三界、吉本の共同幻想論の関係図

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              縁起                      性起
                    アンチノミー
                     ●即身成仏論●
  (本)体     |         (様)相           |   (作)用
    六大      |          四曼            |    三密
              |    金剛界《》胎蔵界      |
        |      心数《》心王        |
                      ●華厳思想●
事事無礙法界  |    事法界《》理法界      | 理事無礙法界
              |     自性 《》自性の否定  |
                    アンチノミー
                       ●カント●
    感性      |    悟性(認識の各領域)  |     理性
   物自体     |          現象            | 超越論的仮象
              |    正命題《》反対命題    |
              |    実践的《》理論的      |
                       ラカン
   現実界象徴界想像界
    もの      |          言葉          |    意味
        |シニフィエ《》シニフィアン|
    他者      |    自意識《》無意識      |    対象a
       |      在  《》 不在       |
                    アンチノミー
                     共同幻想論
経済的諸範疇  |  自己幻想《》共同幻想    |   対幻想
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三界の結びつきを示すボロメアンの環


純粋理性のアンチノミー 先天的理念の第三の自己矛盾

正命題

自然法則に従う原因性は、世界の現象がすべてそれから導来せられ得る唯一の原因性ではない。現象を説明するためには、そのほかになお自由による原因性をも想定する必要がある。

反対命題

およそ自由というものは存しない、世界における一切のものは自然法則によってのみ生起する。

カント 『純粋理性批判岩波文庫 中 篠田英雄訳)』

空海 『即身成仏義(部分)』 現代語訳

【a 即身の詩】
(一)現象・実在の両世界の存在要素である六つの粗大なるもの〔六大〕*1は、さえぎるものなく、永遠に融合しあっている。<体>
(二)四種の曼荼羅*2は、それぞれ(様相の異なる真実の相を表わしており)、そのまま離れることはない。<相>
(三)ほとけとわれわれの身体・言葉・心の三種の行為形態*3が、不思議な働きによって感応しあうとき、すみやかにさとりの世界が現れてくる。<用>
(四)あらゆる身体が帝釈天の持つ網のように、幾重にも重なりあいながら映しあうことを、身に即して〔即身〕という。<無礙>
【b 成仏の詩】
(五)あらゆるものは、あるがままに、すべてを知る智を具えており、
(六)すべての人々には、心そのもの〔心王〕と心の作用〔心数〕がそなわって、無数に存在している。
(七)心そのものと心の作用のそれぞれには、五種の如来の知恵と、際限のない知恵が十分にそなわっている。
(八)それらの知恵をもって、明らかな鏡のように全てを照らし出すから、真実をさとったものとなるのである。

頼富本宏 『密教講談社現代新書)』

*1:六大とは、現象と実在の両様の世界にまたがる存在要素である「地・水・火・風・空」と「認識」という六つの要素。

*2:四種の曼荼羅四蔓)とは、尊像(大)・象徴物(三摩耶)・文字(法)・立体(羯磨)の四つ。

*3:「即身」と呼ばれるものを、作用として把握すると、身体と言葉と心という三種の行為形態(三密)として理解できる。